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3-5 心の健康状態―抑うつ、自尊感情―、自殺を考えたこと

心の健康状態を測定するために、CES-D抑うつ尺度およびRosenberg自尊感情尺度を用いました。その結果、年齢が若いほど抑うつ度合いは高く、自尊感情は低いことが示されました(図6・7)。

■図6 年齢と抑うつの関連

■図7 年齢と自尊感情
図6 年齢と抑うつの関連 グラフ 年齢と自尊感情 グラフ

わが国の自殺既遂者は年間3万人を超えますが、自殺未遂の実態について国レベルで詳細に把握できている状況にありません。また、自殺既遂者の動機や背景要因を記録する際に性的指向の視点は含まれておらず、その関連は何も明らかになっていないのが現状です。ゲイ・バイセクシュアル男性の自殺念慮、自殺未遂割合については、1999年実施のインターネット調査(有効回答数1,025人)の結果と比較してみるとその割合に何ら変わりなく、全体の65%はこれまでに自殺を考えたことがあり(自殺念慮)、15%前後は実際に自殺未遂の経験がありました(図8)。

■図8 これまでに自殺を考えたこと・自殺未遂   (有効回答数=5,731)

   -自殺を考えたこと    -自殺未遂

1999年調査の調査データを用いて、自殺未遂に関連する要因を多変量解析で詳細に分析したところ、自殺未遂に有意に関連する要因が明らかとなりました。大卒以上の最終学歴がある者はそれ以外の者より0.54倍自殺未遂に関連があり、精神的ストレスが強いほど2.1倍、「ホモ・おかま」言葉によるいじめ被害経験があると1.6倍、女性と性経験があると1.7倍、6人以上に性的指向をカミングアウトしていれば3.2倍、インターネットを通じた男性との出会い経験は1.6倍それぞれ自殺未遂に関連があることが示されました(図9)。

■図9 自殺未遂に関連する要因   (1999年調査  有効回答数=1,025)
自殺未遂に関連する要因?グラフ

Hidaka Y & Operario D,  Journal of Epidemiology and Community Heath 60: 962-967, 2006