2,095人(男1,035人、女1,060人)のうち、生涯における自殺未遂割合は全体で9%、性別では男性で6%、女性で11%でした。
とりわけ、男性においては性的指向が自殺未遂経験に関連する決定的要因であることが明らかになり、異性愛でない人の自殺未遂率は異性愛者の約6倍であることが示されています。
わが国では自殺者が急増しており、世界の中でも自殺による死亡率が高い状況にあります。1998年以降、毎年3万人が自殺によって亡くなられており、15歳〜24歳の自殺による死亡者数も多く、若者においても自殺の危険性が高い層であることが示されています。
海外の研究によれば、自殺に関連する要因として@個人要因(年齢、性的指向など)、A対人関係要因(学校でのいじめ経験、家族関係)、B健康リスク要因(性活動、ドラッグ使用経験、飲酒経験、喫煙など)、C心理学的要因(自尊感情など)が複雑に絡みあって起こると示唆されています。しかしながらわが国では、自殺既遂に関連するいくつかの要因が指摘されているにとどまり、広く一般的な若者の自殺未遂に関連する要因については、量的調査としてこれまであまり明らかにされていませんでした。
よって本研究の目的は、わが国における都市部コミュニティーの若者の自殺未遂の予防に役立てるために、自殺未遂の実態とそれに関連するリスク要因を探索的に明らかにすることです。
大阪で多くの若者たちが集まるアメリカ村において、無記名自記式質問票を用いた街頭調査を実施しました。(調査期間:2001年8月〜9月)。
トレーニングを受けた調査員が、研究対象者に調査参加の同意を得て、一人で回答出来る場所に移動してもらった後に、無記名の質問票に回答してもらいました。そして、回答の終了を調査員が確認した後に質問票を厳封しました。研究参加者には謝礼として1000円相当のギフトカードを進呈し、本調査で扱った健康問題のパンフレットをお渡ししました。
- 性経験があること
- 月に一度はアメリカ村に来る人
- 近畿地方に住む人
- 15歳〜24歳の人
年齢、性別、性的指向、自殺未遂歴、学校でいじめを受けた経験、家族と同居しているか、薬物の使用経験、喫煙・飲酒の有無・頻度(ほとんどない、機会があれば、いつも)、性的リスク要因、望まないセックスをした経験、性感染症の既往歴、お金をもらってセックスをした経験、自尊感情について尋ねました。
4,650人に研究参加を募る声かけを行い、有効回答数2,095人(男性1,035人、女性1,060人)を分析の対象としました(図1参照)。自殺未遂経験を独立変数として、個人要因(年齢、性的指向)、対人関係要因(学校でのいじめ経験など)、健康リスク行動(性行動、薬物使用経験、喫煙経験)、自尊感情尺度得点(中央値で高群・低群に2群化)を従属変数としてχ2検定を男女別に行いました。その後、自殺未遂経験を従属変数として、男女別にロジスティック回帰分析を行いました。