全体の9%の人が自殺未遂をしたことがあると回答しました。このうち、女性の自殺未遂経験割合(11%)は、男性の自殺未遂経験割合(6%)よりも高い結果でした。
対象者の特徴と自殺未遂歴との関連を明らかにするためχ2検定を行いました。
自殺未遂経験に関連する要因 (男性)
- ゲイ・バイセクシュアル男性であることや自分の性的指向に疑問をもっていること
- 学校でいじめを受けた経験、薬物の使用歴
- 望まないセックスをした経験
- 性感染症の既往歴
- お金をもらってセックスした経験
これらの要因と自殺未遂経験に関連がありました。
自殺未遂経験に関連する要因 (女性)
- 研究参加者の年齢層が比較的低年齢(15〜19歳)であること
- 学校でいじめを受けた経験
- 薬物の使用歴
- 喫煙や飲酒の頻度
- 望まないセックスをした経験
- お金をもらってセックスをした経験
- 自尊感情
これらの要因と自殺未遂経験に関連がありました。
このことから先行研究が示唆しているように、自殺未遂には様々な要因が関与していることが示されています。また、学校でいじめを受けた経験や薬物の使用歴は、男女共に自殺未遂歴と関連していました。この結果は、自殺予防のためにまず取り組むべき点を示唆していると考えられます。
自殺未遂経験に関連するリスク要因を明らかにするために、ロジスティック回帰分析を行った結果を示しました。
男性では、ゲイ・バイセクシュアル男性であることや自分の性的指向がよく判らない人は、自殺未遂のリスクが5.98倍高くなっていました(オッズ比[OR]5.98、 95%信頼区間[Cl] 2.65−13.48)。また、望まないセックスをした経験がある人は、自殺未遂のリスクが2.03倍高くなっていました(OR 2.03、 95%Cl 1.12-3.84)。
女性では、比較的高年齢(20歳〜24歳)である人は、自殺未遂のリスクが0.47倍と低くなっていました(OR 0.47、 95%Cl 0.30-0.74)。
このようにジェンダーによって違いがみられたことから、比較的若年である女性やゲイ男性に対しては、特別な自殺予防プログラムが必要であると考えられます。また、望まないセックスの断り方といった対処法のトレーニングや教育を行い、広く一般的に性の健康教育を向上させることは、ジェンダーの違いから生じる自殺未遂のリスクを減らすことにも有効であるかもしれません。
男性では、学校でいじめを受けた経験がある人は、いじめ被害経験がない人と比較して、自殺未遂のリスクが5.33倍高くなっていました(OR 5.33、 95%Cl 2.98-9.56)。
女性では、学校でいじめを受けた経験がある人は、同様に2.19倍高くなっていました(OR 2.19、 95%Cl 1.46-3.29)。
これらの結果から、学校教育の一環として、メンタルヘルスについての情報提供や、いじめを受けている人たち向けのサポート・サービスに関する情報提供を行うことが特に有効であると考えられます。いじめ被害者へのサポートを行ううえで、学級担任や養護教諭の役目はとても重要です。加えて考えられるサポート策は、いじめが主に学校で起きているため、いじめを受けた児童や生徒・学生が落ち着いてその経験を話せるように、学校の外で、地域としてサポート・サービスを提供する必要もあると思われます。
男性では、薬物の使用経験がある人は、自殺未遂のリスクが3.12倍高くなっていました(OR 3.12、 95%Cl 1.7-5.73)。また、性感染症にかかった経験(既往歴)がある人は、自殺未遂のリスクが2.94倍高くなっていました([OR]2.94、 95%Cl 1.23-7.02)。
女性では、薬物の使用経験がある人は、同様に2.47倍高くなっていました(OR 2.47、 95%Cl 1.52-4.02)。また、機会喫煙や定期喫煙をしている人は、自殺未遂のリスクが2.22倍高いことが示されました(OR 2.22、 95%Cl 1.33-3.69)。
これらの結果から、薬物使用に関連するリスクについての情報提供と、相互に関連しあう喫煙や飲酒といった他の健康リスク行動についても、適切な健康教育を行うことが、自殺未遂のリスクを減らすために有効であると考えられます。
男性では、自尊感情が高いと、自殺未遂のリスクが0.53倍と低くなっていました(OR 0.53、 95%Cl 0.29-0.97)。
これまでの研究結果から、若者の抑うつや自殺企図を含むメンタルヘルスの悪化について数多く報告されています。これまでに行われてきた若者を対象にした自殺予防プログラム(ピア・サポート・プログラムや相談所、電話相談など)から、自殺やメンタルヘルス、治療サービスに関する一般的な教育が必要であることが示されています。